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2011年6月 7日 (火)

今治・丹下建築群に思うこと

新聞に載ったことで少しは話題となっていると思われるが、

今治市の市民会館の存続・取り壊しの問題。

今後は報告会や意見交換会などに出席させてもらえそうなので

現在の僕の心境を陳じておきたい。

結論から言うと「保存してもらいたい。」

今後この考えがぶれようが、想いとは逆に進むことになっても構わないと思っている。

思いがけない新しい挑戦的な提案が出てくることを望んでいます。

さて

僕は建築を考えるときに疑ってかかる。イヤな人間と思われたくないのだが、

まずは疑ってかかる。そこからしか先へは進めない。常識、王道なんかも疑ってみる。

ただひとつ肯定的に捉えようと努力するものがある。それは周辺環境。特に景観である。

既にあるものは受け入れることから始める方がいい。

ある建築を考え始めたときには場所、景観は変えようがない。

ならいっそのこと良い方に考えてそれをどんどん拡張していこうって先へ進む。

今回の市民会館もそう考えると保存から考えたい。

市民会館、公会堂、市庁舎と世界のTANGE建築が群を成しているものは類を見ないし、

駐車場(広場)を囲んで様々なTANGEの文法が見られること

半世紀に渡って使われていることに価値が見える。

先日、「三棟一括保存」の要望書がDOCOMOMOなど団体連名で提出されている。

では何を疑うか。「存続でよいか」である。

僕自身は「保存」には賛同しているが、耐震性がないのは明白で、どのように補強するか。

が僕にとっては一番気掛りである。

経済性を検討した結果であろうが学校などで見られる耐震補強は本当に不細工なものが多くて痛々しい。

県内八幡市にある木造校舎でこちらもDOCOMOMOで選ばれた日土小学校の改修設計は、

耐震補強をはじめ神経の行き届いた保存再生で 現地に伺って話を聞いて大変共感した。

「保存再生」については慎重に議論する必要があるが、文化的価値というだけでの存続は避けたい。

日土小学校は、社会全体の利益として成功している。

県内にそのモデルがあること、有識者がいることも心強いことである。

まずは、もれなくあらゆる方向性を検討してもらいたいし、

微力にもならないだろうが出来る限り関わっていきたいと思っている。

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コメント

大変、微妙な問題だと思いすよ。

投稿: | 2011年6月 7日 (火) 21時03分

大変、微妙な問題ですね。
おそらく内輪に入るともっと大変だと思います。
なのでその前に自分の考えを持っておきたいと
思い独白しました。

投稿: 長井 | 2011年6月 7日 (火) 22時52分

青陽くんから、「長井君のブログなかなかのもんですよ」とメールくれました。
それですぐに、覗かしていただきました。
丹下建築群の評価を、原風景(景観)として捉えている(捉えようとする?)事、その感じ方大変面白いし、なるほどと思います。
そういう意味からいえば、できるだけ多くの今治市民にそんな原風景に気付いてほしいとの思いを強くします。
さて、耐震改修の話ですが、長井君の表現を借りれば「痛々しい」改修はこれらの建築にはナンセンスで、やる必要なしと僕も同意見です。
やはり論議されるには、どれだけの予算をつぎ込む事ができるかどうか、そしてこれらの施設が社会の中で、その費用に対して許容されるか、あるいはもっと違った機能を見出していけるかにもかかっているような気がしています。
しかしながら、合併特例債、庁舎機能の不充実、そして耐震不足の市民会館とこちらの3点セットを、購入しようとしていて、その改築有りきの姿勢がその論議をしようにも、それを大きく阻んでしまうような状況にあるのは歪めようのない事実です。
発表はしていないが、トップはもうすでに腹を決めているのではないか?
期限付の合併特例債の枠を使いたいのに、ごみ焼却場移築、中心市街地小中学校統合、等どれも動かないし、手のつけようがない。
一番進めやすいのが市庁舎エリアの中で、まずは公会堂の修繕から初め、そして市民会館の改築へと事を運ぼうと考えるのはとても容易です。
変な(政治)話になってしまいました。
長井君たちのように建築に携わり、自分の考えをもつ若い力は決して微力でなく大きな力です。
取り壊し賛同派でなくよかった(笑)
なんとか、論議ができる環境をつくる力になって下さい。
このコメントは決して、市政批判ではないことを申し添えます。

投稿: 大野順作 | 2011年6月 8日 (水) 01時18分

コメントありがとうございます。
建築に携わるものとして原風景を作っている意識は忘れてはならないと思います。
原風景を壊したと批判されるかもしれないとプレッシャーを感じながら行っております。
ある建築を考え始めたときに景観は変えようがないと乱暴に言いましたが、長い年月をかけて更新していって欲しいと願っておりますし、ひとつの建築から変わっていけるものと信じています。
建築に政治はつきものです。政治はいつから変な話になったんでしょうね。僕自身も大切な話というよりも変な話になるなと思っていましたが、改めて考えるとこの考え方自体が変です。
今回の市民会館は建築の話であり政治の話だと思っています。まずは、経済性機能的価値、文化的価値も含めて社会の利益になるような論議ができる環境になるようにしたいですね。

投稿: 長井 | 2011年6月 8日 (水) 10時20分

どんな建物なんだろう?て初めて知りました。

「震度6強の地震で崩壊の危険がある」と聞けば、市民は「そりゃ危険だ!」て反応になるよね~。
耐震基準にせよ、予算にせよ、ものさしが変わるとあたふたするよね。

権限を持つ人に、遺したいという意志がなければ、
結局は市民の声を楯に取られるんじゃない?

でも、すごいことですね。
存続をめぐって国際団体までもが関わってくるなんて。

それをきっかけに少しでも多くの人が、自分たちの街に関心を向けてくれたらいいですね。
そうゆうアピールも建築家の大切な役目というか、レーゾンデートルでしょ。

あの、よく市庁舎に垂れ下がっているブサイクな垂れ幕に負けないように、建築の存在意義を問うてください!
がんばってね~!

ちょっと(全然)違うけど、岡山のチボリ公園が行政の押し付け合いの末、幕を閉じるとき、市民は大勢来園して、閉園を惜しんだんですよ。
営業中は大して行かないのにね。
でもスタッフはがんばってたし、泣いてたよ。
きっと市民会館のお掃除おばちゃんも泣いてるよ。

投稿: ゴエモン | 2011年6月 9日 (木) 17時17分

コメントありがとうございます。
建築家のレーゾンデートル。なんだか美味しそうな言葉ですが(笑)
要望書を提出したことで、(もしかすると市民の声を盾にしようとする)権限を持つ人のアカウンタビリティに対しては布石を投じれたと考えます。ただ文化的価値を市民の声の矛にするよりもゴエモンさんの言われるように、多くの市民の方が建築に、街に少しでも関心を向けてもらえるといいなと思います。耐震基準、予算、文化的価値それ以外にもたくさんのものさしがあるだろうけど、きちんと単位を揃えて考えてもらいたいです。

投稿: 長井 | 2011年6月 9日 (木) 19時02分

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